ドイツ鉄道(DB)の誤算
(5月11日)
 DB(ドイツ語では「デーべー」と発音)は、「ディー・バーン(Die Bahn)」の省略形、つまり「The 鉄道」というわけだ。以前は「ドイチェ・バーン(Deutsche Bahn)」、訳せば「ドイツ鉄道」とちょっと重苦しい名前を名乗っていた(日本では今もそれで通っているだろう)。名前の響きだけなら、かなり「クール」になった。しかもイニシャルは、“DB”のままなのだから、ロゴは変えずに済んだ。安上がりなイメージ戦略だ。そんなクールな改革が、DB社長のメードルン氏の指導下で行われた。
 さてそのメードルン氏が次に手を付けたのが、料金体系の抜本的改革だった。どう変更したかというと、従来の割引切符の大部分を廃止し、代わりにいわゆる「早割」と「新バーンカード」への割引システムの集中を行った。つまり早く予約されたお客さまにはそれなりの割引を、そして割引優待券(これが「バーンカード」)をお持ちのお客さまにもそれなりの割引をいたしましょうというもの。航空業界のやり方に似ているという批判は、ひとまず棚上げにしよう。
 ただ「早割」も「バーンカード」も以前からあったもので新しくはない。違うのはその割引範囲を“抜本的”に拡大したということ。とくに「バーンカード」では、「早割」との併用や同行者割引との併用にも適用しますよという大盤振る舞いだ。この併用は以前にはなかった。二人で旅行するなら、早割で通常料金の40%割引、さらに新バーンカードがあれば66%もの割引だ。こんな有利なバーンカードを持ったお客は旅行に鉄道を選ぶに違いない。もう航空業界にも自動車にも負けない。メードルン社長はそう思ったに違いない。
 さてそんな改革が断行されてどうなったのか。今年の第1四半期の売り上げは、前年同時期に比べ13%の落ち込み、DBの予想よりも19%も低い数字だ。なぜこんなことに?。
 この落ち込みの原因は、新バーンカードの割引率にあると分析筋は見ている。新バーンカード割引の適用範囲はかなり拡大したが、割引率は以前の50%から25%に下げられた。新バーンカードが旧バーンカードに比べて有利になるのは、早く予約して、多人数で旅行するときだけ。つまり同行者と早くから旅行を計画しなければいけないってこと。これでは、事前の予約なしにいつでも旅行できるという鉄道の利便性は全く失われている。それに併用が許されるといっても、カードによる割引率が下がっているのなら、全体の割引率にはそれほどの変化はない。そういう朝三暮四に、ドイツの消費者は乗ってこなかった。
 言い忘れたがバーンカードは有料。一年間有効2等用が60ユーロ、1等用が150ユーロ。あなたなら買うだろうか。どうせなら航空業界をそっくりまねて、“DBマイレージカード”にしてみてはいかがだろう。

バイエルン・ミュンヘン、優勝決定
(4月27日)
 4月27日(土)、ブンデスリーガ2002−03シーズンは、あと4節を残して、バイエルン・ミュンヘンの通算18度目の優勝が決定した。バイエルン・ミュンヘンは、土曜日に行われた対ヴォルフスブルク戦を0−2で勝利し、2位につけているシュツットガルトとの勝ち点差を13ポイントとした。勝利で3ポイント、同点で1ポイント、敗北で0ポイントという得点システムでは、バイエルン・ミュンヘンが残る試合を全敗し、2位のシュツットガルトが全勝しても13ポイント差は埋まらない。優勝は決まった。
 オリバー・カーン他、日本でも人気のある選手を多数抱えるこのチームだが、昨年の日韓共催ワールドカップ以降、日本市場に狙いをつけている。日本でのファンショップ展開や日本語でのホームページ開設を計画しているということだ。ハンブルガーSVに所属する高原直泰選手に関する日本での報道は、多少過熱気味のようだが、ドイツの他のサッカーチームも、そんな日本のサッカー市場を狙って日本人選手を物色中とのこと。
 未曾有の不況とは言いつつ、日本人の購買意欲はまだまだ世界最高レベル。日本人選手を買って、ユニフォームのレプリカ等、キャラクター商品が売れれば、移籍のための費用は安いもの。その上、スポンサーの獲得にも有利とくれば、各チームともサッカー市場での“黄金の国”に目を向けないわけにはいかない。
 第2、第3の高原がドイツのシュタディオン(スタジアム)に現れる日も遠くないだろう。しかし世界が日本のサッカー市場に注目することで、日本から優秀な選手が世界に流出してしまうというのは、なんとも皮肉な話だ。

2012年のオリンピックはライプティヒで?
(4月15日)
 4月12日(土)、ドイツ・オリンピック委員会は、2012年開催のオリンピック候補地としてライプティヒの推薦を決め、結果はシュレーダー連邦首相によって発表された。最有力候補としてはドイツ最大の港湾都市ハンブルクの名前が挙がっていたが、それを差し置いての「ドイツ代表権」獲得だった。テレビで放映されたところでは、市長をはじめ市民の喜びようは、もう正式決定されたかのように感じられた。
 候補地としては、アメリカとスペインの代表として、それぞれニューヨークとマドリードがノミネートされている。これらの国際都市にドイツの地方都市が太刀打ちできるのか?。ライプティヒ旧市街の市場広場に集まった市民に、テレビが取材マイクを向けると「代表に選ばれるとは思わなかったね。ドイツで奇跡が起きたんだから、世界でも起きるさ。」と、ドイツ人らしからぬ楽観ぶり。果たしてそううまく行くだろうか?
 旧東独地域に位置するこの街、高い失業率等で暗いイメージがないこともないが、ドイツで最も生活しやすい街の一つとして名前が挙がったこともある落ち着いた都市だ。人口43万あまりと小振りだが、中世以来の商業都市として有名で、今もメッセ(国際見本市)が開催されている。特に本のメッセでは、フランクフルト・アム・マインと並び称される。他にも最近改修されたヨーロッパ最大級の鉄道駅、2本目の滑走路(3600m)が完成し長距離国際航空にも対応できる空港と、インフラだけで見れば「東のフランクフルト・アム・マイン」になる資格も十分にありそうだ。あとは国際的なイベントを呼び込み、経済を活性化するばかり。「可能性を秘めている(potentiell)」のは確かだが、それを現実のものにするのは難しい。
 正式決定は2005年月、シンガポールで発表される。

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